【映画感想】落下の解剖学 客観性の無意味さをあざ笑う名作
落下の解剖学 : 作品情報 - 映画.com
落下の解剖学の作品情報。上映スケジュール、映画レビュー、予告動画。これが長編4作目となるフランスのジュスティーヌ・トリエ監督が手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭コンペティ...
eiga.com落下の解剖学の作品情報。上映スケジュール、映画レビュー、予告動画。これが長編4作目となるフランスのジュスティーヌ・トリエ監督が手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭コンペティ...
2023年カンヌ国際映画祭でパルムドールでアカデミー賞脚本賞受賞のフランス映画、落下の解剖学
予告を見るとサスペンスやミステリー性が強い作品かなと思っていたけど、どちらかというと客観のもろさや
主観的内面性の相互理解を法廷劇を題材に表現した作品でした。
あらすじ
人里離れた雪山の山荘で、視覚障がいをもつ11歳の少年が血を流して倒れていた父親を発見し、悲鳴を聞いた母親が救助を要請するが、父親はすでに息絶えていた。当初は転落死と思われたが、その死には不審な点も多く、前日に夫婦ゲンカをしていたことなどから、妻であるベストセラー作家のサンドラに夫殺しの疑いがかけられていく。息子に対して必死に自らの無罪を主張するサンドラだったが、事件の真相が明らかになっていくなかで、仲むつまじいと思われていた家族像とは裏腹の、夫婦のあいだに隠された秘密や嘘が露わになっていく。
テーマ
- おそらく本作のテーマは、客観的事象の脆さやあやうさ、重要なことは主観的な解釈が織り交ざって現実は成り立っていることであろう。
- 不審な落下事件に対する法廷劇を舞台とする本作は、サスペンスやミステリードラマとしての事件の解決ではなく、
作品を通じて人と人との間の客観性の脆さや主観的視界とその他者からの理解の本質的重要性を表現している。
ポイント①:犬と人間の名演技
- 総じてキャスト陣の演技は素晴らしい。
- 特に、ペットの犬の演技と、その飼い主の11歳の息子役、そして主人公の適役となる判事の演技は、
物語にリアリティと緊張感をもたらす名演技であった。
ポイント②:主題を効果的に表現する演出技法
- 裁判の途中に科学に基づく客観的事実が述べられるシーンがあるが、おそらく意図的にコミカルで
少し笑ってしまうような撮られ方をされていたが、後から思うと客観性や科学的見地の本作品における
無意味さを表していると感じる。 - 対照的に、中盤には夜道を車で走るカットや、ハンディカムで撮影したような画角やブレたショットも挟まり、
観客が一主観としてそのシーンを見ているかのような演出がされている。
気になった点①:序盤のシナリオの起伏の無さ
- 物語序盤は、どちらかというと淡々と静かに事件が発生しその状況が整理される、起伏の無い設定提示がされる。
- どのような物語なのか、なにを感じて見ればいいのかを考えるという点で多少の緊張感をもって見られるが、
作品全体の静かなトーンも相まってやや退屈に感じる部分もあるだろう。
気になった点②:物語としての解決
- 事前や物語序盤に想定をしていたような、物語としての解決が、事件の客観的解決と一致する映画では無かった。
- テーマでも述べた通り、本作で重要なことは客観性の脆さであり、いわゆるミステリーや探偵物のように、
証拠や証人が集まり、事件のトリックが説明され、客観的な時間の解決が図られる作品ではないことが、
観客によっては想定していた内容とはことなることがあるかもしれない。
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